今回は、8月26日にご報告いただく駒井匠氏(立命館大学大学院)のご専門や、これまでの研究内容などについてご紹介させていただきます。
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駒井匠氏は、これまでの古代の得度受戒についての制度的考察を足がかりに、奈良・平安時代の政治権力と仏教の動静を継続的視野をもって考究しており、とくに、政治権力の変質過程の具体相の解明をめざしています。
氏の研究は、奈良・平安時代を政治史・仏教史の両側面から考察し、その変容過程を動的にとらえようとすることに特徴があります。今回の発表は、これまで研究が薄かった平安時代前期に注目し、政治権力(宇多太上法皇とその周辺)と仏教との関係を考究していくものでしょう。この実直な作業は、じつは、従来の制度の説明とその崩壊過程の説明とでつくられた古代史の枠組みそのものを、変えていく可能性を含んでいます。
今回の報告の核となる問題は、なぜ9世紀半ば以降には、天皇の生前譲位・仏式の隠居が通例化し、さらには摂政・関白という装置を備えた政権構造が確立していくのかということです。この問題をあきらかにしようとする作業にとりくむことは、8世紀を頂点に仏教史が古代国家論に組み込まれて説明されるいわゆる国家仏教論の見直しはいうまでもなく、〈古代は崩壊する〉・〈中世は成立する〉という国史学の伝統的命題そのものを見直す作業へと連動することになると考えられます。
【主な論著】
・「奈良時代得度制度の再検討-天平六年十一月太政官奏を中心に-」『続日本紀研究』378、2009年
・「平安前期における南都授戒制度の変質とその背景」『立命館文学』624、2012年
・「宇多上皇の出家に関する政治史的考察」『仏教史学研究』55-1、2012年
(文責:世話人ブログ担当)
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