2013年6月30日日曜日

2013年度 日本宗教史懇話会サマーセミナーの概要紹介①
 :報告者 大川真氏について

今後、ホームページ(ブログ)により今年度の日本宗教史懇話会サマーセミナーの見どころなどをご紹介していきます。 今回は、8月27日にご報告いただく大川真氏(吉野作造記念館)のご専門や、これまでの研究内容などについてご紹介させていただきます。

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大川氏のご専門は、近世・近代政治思想史・文化史で、さらに環境倫理、環境ガバナンス研究まで手を広げていると聞いています。また最近の大川氏は、勤務先の業務に連動したプロジェクトの立ち上げなど、社会教育などにも精力的に取り組んでいます。
従来、近世の宗教史研究では、日本の儒者の言説が取り上げられことは多くありませんでした(多少の例外が儒家神道)。たしかに、檀家制度が布かれた近世社会にあって、儒教をもとにした宗教儀礼がほとんど行われなかったのは事実です。ただし日本の儒教でも、大陸の儒教と同様に祖先祭祀は重要な問題として考えられており、宗教制度史研究とは異なる文脈から儒者の宗教観を考える必要があるでしょう。近世には中江藤樹や山崎闇斎など、儒教の宗教性に注目し、独自の思想を模索した人々が確かに存在していました。
大川氏は大学院時代から、近世中期の政治家でもある新井白石の宗教観を分析することで、儒学者と宗教の関係という問題に取り組んできました。加えて、近世後期の中井竹山や藤田幽谷、会沢正志斎などをも対象とすることで、国家イデオロギーについての考察を進めてきました。今回の報告でも、新井白石を取り上げるとのことですので、おそらくご自身の研究蓄積にもとづく新たな視点や成果が明らかにされるとともに、問題のありかが明確に示され、分野を異にする研究者にも多大な刺激が与えられるであろうと期待しています。

【主な論著】
・「消失しない霊魂-江戸精神史の一側面-」『季刊日本思想史』78、2011年
『近世王権論と「正名」の転回史』御茶の水書房、2012年
・「有備館の人材育成と儒教文化」野村俊一・是澤紀子編『建築遺産 保存と再生の思考—災害・空間・歴史』東北大学出版会、2012年
・「幕末における共和制・大統領制・民主政治の理解」『吉野作造研究』9号、2013年
(文責:世話人ブログ担当)

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