今回は、8月27日にご報告いただく三橋正氏(明星大学)のご専門や、これまでの研究内容などについてご紹介させていただきます。
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三橋正氏は、これまで『平安時代の信仰と宗教儀礼』において、古記録を主要な史料として平安貴族社会における神祇・仏教・陰陽道など複数の宗教と関わる様々な信仰形態や宗教儀礼について分析し、平安時代とりわけ摂関期において、神と仏や日常的禁忌を必要に応じて使い分ける「日本的」宗教構造が形成されたことを解明されています。近年では、『日本古代神祇制度の形成と展開』を出版され、古代から中世にかけての神祇儀礼や穢規定・神職制度の歴史的変遷を検討し、個別の制度面の形成と展開という視点から、「神道」の四段階成立説を提示されています。「神祇」とタイトルにはありますが、著者は前著に引き続き神祇制度や「神道」を固定的なものとして捉えるのではなく、仏教など諸宗教の影響を受けつつ、古代から中世へと歴史的に形成されていったものとして捉える点が重要であると思われます。その他にも精力的に史料註釈を行っており、『麗気記』の註釈により、中世神道についての見解を示されている他、『小右記』の註釈も出されています。これらを総合して、古代から中世へと「神祇世界」がどう変遷したのか、氏の最新の研究の展望が示されることが期待されます。
【主要著書・論文】
・『平安時代の信仰と宗教儀礼』続群書類従完成会、2000年
・『日本古代神祇制度の形成と展開』法蔵館、 2010年
・「『麗気記』の構成と言説」『日本学研究』4、2001年
・「中世前期における神道論の形成―神道文献の構成と言説―」大隅和雄編『文化史の諸相』吉川弘文館、2003年
・「密教儀礼から神道論へ」『東洋の思想と宗教』22、2005年
・「『麗気記』の構想と「神体図」―密教による神の理論化と図像化―」速水侑編『日本社会における仏と神』吉川弘文館、2006年
・「蔵王権現と黄不動―日本の山岳宗教における神の出現―」明星大学日本文化学部共同研究論集第10輯『言語と芸術』明星大学日本文化学部、2007年
・「日本的信仰構造の成立と陰陽道」鈴木靖民編『古代日本の異文化交流』勉誠出版、2008年
・「九条家における基層的神祇信仰」小原仁編『「玉葉」を読む―九条兼実とその時代―』勉誠出版、2013年
(文責:世話人ブログ担当)
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