今回は、8月27日にご報告いただく高本康子氏(北海道大学スラブ研究センター)のご専門や、これまでの研究内容などについてご紹介させていただきます。
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高本康子氏のご専門は比較文化論と日本近代史で、特に明治期の日本仏教とチベット仏教の交流に重点を置いた研究を重ねています。
日本近代の仏教史研究は、ともすると真宗を中心とする国内の動きに目を奪われがちとも言われます。しかし、明治期は「鎖国」が終わり、日本仏教が欧米の仏教学の洗礼を受け、国際的な仏教研究が注目を集めた時期でもありました。江戸時代以来の護法論/排仏論のせめぎ合いが、国家神道の確立・展開という新たな社会状況のもと改めて議論される中で、国際的に通用する仏教を求め、多くの僧侶が海外に渡りました。特にチベットは、インド仏教が滅びたのち、古い形の仏教を考える上で重要と考えられ、世界的にも注目された地の一つでしたが、何人もの日本人僧侶が到達することに成功し、貴重な史料を持ち帰ったことが知られています。明治期のチベット仏教研究は、日本一国の枠を超えた文化史的意義を持つにもかかわらず、研究者人口は僅かで、学界における存在感も(特に日本仏教においては)薄かったと思われます。その数少ない若手研究者の一人が高本氏です。
今回のご報告では、述べてきたような研究史的意義に比べ、なお知られること薄いチベット仏教と日本仏教の交流を通じ、日本仏教の特質や今後の有益な研究方向が示唆されることを期待したいと思います。
【主な論著】
・「戦時期満洲国における「時輪金剛仏曼荼羅廟」建立について」(『密教文化』第226号、密教研究会(高野山大学)、2013年6月)
・「真言宗と「喇嘛教」―田中清純の活動を中心に―」(『群馬大学国際教育・研究センター論集』11号、2012年3月)
・『国立民族学博物館青木文教師アーカイブ『チベット資料』目録』(長野泰彦と共編、国立民族学博物館図書委員会アーカイブズ部会、2008年)
・『近代日本におけるチベット像の形成と展開』(芙蓉書房出版、2010年)
・『チベット学問僧として生きた日本人-多田等観の生涯-』(芙蓉書房出版、2012年)
(文責:世話人ブログ担当)
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